エーワン精密さんが日本経済新聞に
先日、うれしくなるような日本経済新聞の記事を見つけました。
エーワン精密さんのことです。
以下、引用します。
【堅調】主力の小型旋盤向けコレットチャックはオーダー品や高精度品、専用機対応で安定した収益を確保。旋盤メーカーの受注増も追い風。切削工具は準大手、中小企業の再研磨や特定工具の需要を取り込む。大手向けの価格競争避け、利益重視の姿勢。増収。償却費が減って営業増益。純利益は横ばい圏(日本経済新聞 2017年11月25日)。
さすがだとしか言いようがありません。
社員のみなさんを徹底的に大切にする姿勢と、社員さんのがんばりが見事な成果をあげているのです。
エーワン精密さんは1965年設立され、社員さんの数が約110人の会社です。
まさに町工場という(十分大きいですが)規模にも関わらず、高収益をあげているのです。
エーワン精密さんはジャスダック上場を成し遂げています。
エーワン精密さんの社員さんを徹底的に大切にする経営
梅原相談役の人を大切にする経営は、「当たり前のことを当たり前にしている」に行き着きます。
いかにそれが難しいかも含めてお話しします。
梅原相談役は社員さんを終身雇用でずっと面倒を見続けると言い切ります。
定年も10年ほど前に無くしてしまったそうです。
社員さんの給料は同業他社の1.5倍です。
工場内は整理・整頓・清掃・清潔が行き届いており、社員さんは働きやすい環境で自身の力を発揮されています。
昼ご飯は明るくて広い清潔感のある食堂で食べます。
良い機械を使い、良い人財と共に働くことが大切だからです。
会社が儲かった後は、人と設備にお金をかけます。
製品に関してはQCD(品質、コスト、納期)のうち、品質と納期に力を入れています。
価格は適正価格です。
価格競争を絶対にしないのです。
それが社員さんを守ることに直結するからです。
大手からの値下げ要求が厳しい中でも、販売価格の据え置きを貫いております。
不況のときにするべき事は、逆転の発想で人を採用し、設備を導入し、次の好況のために力をつけるのです。
リストラはもちろんしません。
そして、ムダだと思ったことは徹底されています。
組織は、工程管理、納期管理、品質管理といった部署もなく、朝礼も会議も行わないのです。
全員で工程を管理し、納期を管理し、品質を管理しているからです。
それでいてコミュニケーションが取れていないという訳ではありません。
工場内の壁に掲げてあるホワイトボードには様々な情報が掲示されています。
無駄なものを無くすという意味では梅原相談役の机すらもないほど徹底されています。
高収益を続ける秘訣は
エーワン精密さんは、旋盤治具であるコレットチャックの製造をメインに展開されています。
コレットチャックとは、旋盤・フライス盤などの工作機械で使用するもので、工具やワークを固定する筒状(コレット形状)の部位のこと、またはそのパーツ(治具)単体のことです。
軸の中心から放射状に切込みを入れてワークを挿入し、外側から締付けることにより固定する仕組みになっていますので、優れたスプリング性はもちろんのこと、耐摩耗性や芯振れ精度が要求される特殊な治具なのです。
エーワン精密さんのコレットチャックは、厳選された素材で、加工から熱処理まで一貫して自社で実施することが可能であり、高精度の製品を作り出しているのです。
そのため、他社では絶対に真似のできない製品なのです。
エーワン精密さんのコレットチャックは、国内シェアのなんと6割を占めます。
そして、その受注量は1日に500件以上です。
その注文に対して即日対応し、なおかつ、その8割を即日納品しているのです。
短納期をどうやって実現しているのか
製造業では、品質、コスト、納期のいわゆるQCDを重視します。
エーワン精密さんでは、その中でも特に品質と納期にこだわり、納期に関しては、通常1~2週間かかるものを1~3日で対応してしまうのです。
では短納期をどのように実現しているのかですが、その秘訣は、社員さん全員での対応力ではないでしょうか。
まず、電話を取った社員さんが指示と手配をその場で行います。
お客様からの注文は全て手書きで、そのまま工場へFAX送信されます。
この注文書は作業指示書を兼ねており、注文指示書といいます。
さらに社員さんはその場で取引先への送り状も書いてしまうのです。
実際の注文指示書を見せてもらいましたが、非常にシンプルで、下半分が図面を書くようになっています。
そして、いちばん下の部分に大きく「必ず○月○日まで」と記入されています。
高品質、短納期を実現するこの注文指示書だけでも多くの企業で参考になるのではないでしょうか。
場合によってはその日の内に出荷可能になります。
つまり納期1日が実現されるのです。
お客様にとって何日かストップするロスを考えれば、はじめからエーワン精密さんに頼った方が結果的に安いのです。
逆転の発想
梅原相談役は、経営者は5つの数字だけ見れば十分ということで、売上額、人件費、設備費、材料費、総支出の5つの数字だけで経営判断しています。
また、通常の稼働率は7割を維持し、人員と設備を過剰気味にしています。
普通は逆にしたがりますが、これは急な案件に対応できるようにしているのです。
好況時にこそ資金をためて、不況になった時こそ人財の採用と設備投資を行うのです。
これも逆転の発想です。
さらに、社員さんは見事に多能工化が図られています。
全員経営と言っても良いでしょう。
正しい経営は決して滅びない
以前、2008年7月に訪問させていただいた時の様子をブログで紹介させていただきました。
梅原勝彦相談役はその後静岡で講演があったときも、私を見つけてくれて気さくにお話しいただきました。
その後、カンブリア宮殿にも出演され、人を大切にする経営の神髄をお話になりました。
またぜひともお時間をいただいてお目にかかりたい経営者のおひとりです。
人を大切にする正しい経営は決して滅びません。
大丈夫でいきましょう!