トヨタが成果主義への移行を加速させる?・・・気になる点がふたつあります

  1. 社会(政治・経済等)が企業や私たちにどんな影響を与えるか

「頑張った人がより報われるようになる制度」・・・果たして?

トヨタが新たな賃金制度を来年から導入するようです。

これまでの定期昇給を見直して、人事評価に応じて昇給額を決定する内容のようです。

以下、中京テレビNEWSの記事を引用いたします。

トヨタ自動車は、来年1月から定期昇給を見直し、人事評価に応じて昇給額を決定する新しい賃金制度を導入することを決め、組合に提案しました。

これについてトヨタ自動車労働組合は、30日に愛知県豊田市で開いた定期大会で、同意することを満場一致で可決しました。

トヨタの定期昇給は、職位などに応じて一律に昇給する部分と、人事評価に基づく成果分の二つの要素で構成されていましたが、新賃金制度では人事評価に基づくものに一本化します。

評価に応じて配分が増えるため、社員の働く意欲を高める狙いがある一方、最も低い評価となった場合は、定期昇給がゼロになる可能性があります。

労組の担当者は、組合の雇用を守るため働きがいの向上だけでなく、今後、賃上げや一時金についても議論していくとしています(中京テレビNEWS 2020年10月1日)。

現時点のトヨタの基本給は、職位に応じて一律に決まる「職能基準給」と、評価によって決まる「職能個人給」の2種類があります。

前者では職位が同じならば定昇額も一律で同じですが、後者は職位が同じでも評価によって差が出るものです。

新制度では、定昇から一律部分がなくなり、定昇額が評価だけで決まるようになるそうです。

最も低い評価では定昇がないケースも考えられます。

この新制度はについて、トヨタの労使はともに「頑張った人がより報われるようになる」との認識を示していますが、果たしてどうでしょうか?

とても気になります。

私がなぜそのように思っているかというと、ふたつの理由があります。

それらについて以下に示しますが、トヨタにはぜひ挑戦していただければと思います。

そして、改善を繰り返しながら、人の本質を改めて共有し、さらにいいものにしていって欲しいと願っております。

それがトヨタです。

※以下は私の師匠から教えていただいたことを記した記事です。

この世の中に評価制度が完璧に機能している会社はない・・・なぜなら評価するのは人だから

疑問に思っているひとつめのことについて記します。

そもそも評価制度は、働く社員さんのモチベーションを高めるためにあります。

ところが、人件費を下げるという目的で導入する会社も存在しますので、要注意です。

そのような目的で導入した企業は大抵失敗します。

よもやトヨタは違うと思いますが・・・。

上記の記事によれば、トヨタは「がんばった人がより報われるようになる制度」を目指しています。

ところが、多くの会社で反対のことが起きています。

それどころか、評価制度が社員さんのモチベーションを下げてしまうことになっている会社が多いのです。

それはなぜでしょうか?

理由は単純です。

評価するのも人だからです。

完璧な評価ができる人は皆無だからです。

どんな人でも、心理的誤差傾向が起きたり、間違った評価をしたりしてしまうものだからです。

例えば、部下が自分と出身校や出身地が同じだけで、つい評価をしてしまっていませんか?

それは本来の仕事の評価とは全く関係ありません。

同じ評価制度を使っても、ある上司とある上司でその人の評価が異なるのならば不公平です。

ですから、評価者には極めて高いスキルが求められます。

トヨタの新制度ではその欠点を補うものにしなければいけません(年齢給は本来そうした欠点を補う意味もあります)。

なお、一般的な会社では上司が部下のモチベーションを高めるどころか、モチベーションブレーカーになってしまっているケースも珍しくありません。

助けあいの風土がなくなり、カイゼンの源となる「BAD NEWS FIRST!」が失われるおそれ

疑問に思っているふたつめのことを記します。

それは、人による評価のみで給料が決まるようになると、目先のことにこだわるようになり、助けあいの風土がなくなる傾向が非常に強い点です。

それは、評価を気にして上ばかりを見る社員が増えるからです。

今で言う、忖度をする社員も出てきてしまうかもしれません。

そうなると、トヨタの大切な文化である「BAD NEWS FIRST!」が機能しなくなってしまうかもしれません。

「BAD NEWS」はカイゼンの源です。

部下がリーダーに苦言を呈することがトヨタの組織風土の源です。

それをする部下が評価されるのです。

それが風通しの悪い組織風土になってしまうと、社員さんのモチベーションも大きく下がります。

そもそも、どんな仕事も一人で完結することはありません。

どんな仕事も必ず協力してくれる人や企業が存在します。

ですから、仕事で大きな成果をあげたとしても、それは様々な人の協力によって達成していることを忘れてはなりません。

そこを見失ってしまうと、評価制度は不公平なものとなります。

成果に連動した評価制度によって、それまでの企業にあった助けあいの社風が薄れてしまった会社もあります。

個人主義になると、お互い様の風土が薄れ、組織全体の生産性が下がってしまいます。

この点もぜひ注意して欲しいと思います。

人を大切にするいい会社は年功序列・終身雇用

先日、伊那食品工業さんのことが記事になっていました。

伊那食品工業さんは「人を大切にする会社」として未来工業さんと双璧をなす会社です。

このコロナ禍でも社員さんの給料は下がりません。

例え売上が下がっても下がりません。

だから、社員さんはがんばるのです。

これぞ「あるべき姿」です。

以下、ブルームバーグの記事を引用いたします。

長野県の山間にある伊那食品工業の朝、塚越寛最高顧問はいつものように社員を笑顔で迎えた。10月で83歳になる塚越氏は、60年余りの会社経営で社員を家族として考え、これまで1人たりとも社員を解雇していない。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が大恐慌以来最悪の経済危機をもたらす中でも人員を削減する考えはない。塚越氏はこれまで約500人の全社員に雇用は守られていると語ってきた。2020年度の売上高は前年度を15%下回る見通しだが、それでも年間の給与は若干増え、夏季賞与も満額あるという。

会社の成長が不安定になると、社員は「いつ首になるかもしれない。いつ左遷されるかもしれない」と不安になってしまうので、「いつでも幸せ感を持つためには常に右肩上がりに行かなきゃいけない」と塚越氏は話す。

寒天メーカーの伊那食品は低成長下の日本で優等生に数えられる。トヨタ自動車の豊田章男社長は伊那食品を視察に訪れたことがあり、経営に関する塚越氏の著書を称賛する。塚越氏が来客を迎える応接室には、15年に訪れた日本銀行の黒田東彦総裁の写真が飾られている(ブルームバーグ 2020年9月29日)。

豊田章男社長が塚越会長のことを経営の師匠とされていることは有名です。

ならば、伊那食品工業さんのように、年功序列・終身雇用こそが社員さんのモチベーションと会社の確実な成長に繋がることはご存じでしょう。

社員さんを大切にすることこそがかけがえのない「人財」を生み出し、差別化に繋がるのです。

そのような会社を社員さん一人一人が協力してつくっていくのです。

なお、伊那食さんでは、社是である「いい会社をつくりましょう」が約500名の社員さんに浸透しています。

行動基準のすべてがそこにあるのです。

会社の規模の違いはあるかもしれませんが、誰もががんばる会社では、年功序列・終身雇用が最も理にかなっています。

私の勝手なお願い・・・目先のことではない経営を

がんばった人が報われる制度がもし実現したら素晴らしいです。

しかし、繰り返しますがそのような制度が完璧に機能している会社は世の中にありません。

どんなに完璧な制度であっても必ず不公平感が出ます。

なぜならば評価者も人であり、心理的誤差傾向が起こったり、先入観に支配されたり、間違えたりするからです。

もし1度でもマイナスの評価をされてしまったら大変です。

イメージがついてしまうと、本人がいくらがんばってもなかなかリカバリーできません。

正当な評価を受けるには、相当高いハードルが存在するのです。

そういった人の本質を私たちは忘れてはならないと思います。

そして、評価者は常にそのことに気を付けるべきです。

さて、人というのは、そのありがたみは失ってからはじめてわかるものです。

もしかしたら、トヨタに限らず、我が国の大手企業はこれから年功序列・終身雇用のありがたさが痛いほどわかるようになるかもしれません。

私はそうあるべきだと思っています。

そうしないと、我が国の喫緊の課題である少子化も歯止めが効かなくなるでしょう。

我が国を代表する企業には、それだけの社会的責任が伴います。

どうか、目先のことではなく少し先を見据えた経営をお願いいたします。

大丈夫でいきましょう!

弊社の講演会・セミナーの特徴は
お客様の高い満足度です。
企業支援の事例や現場のノウハウが
フィードバックされるためです。

詳しくご覧ください