中小企業が日本経済停滞の原因?価値がない?・・・中小企業をみくびらないでいただきたい

  1. 人と会社・企業

デービッド・アトキンソン氏の「中小企業淘汰論」

先日、菅総理が中小企業の定義を変える方針を示しました。

これによって「中小企業」の在り方が大きく変わるおそれがあります。

私も記事にしました。

静岡朝日テレビの番組で、静岡県内のある企業の社長が取材を受けていました。

中小企業再編について、この企業の社長が戸惑いを感じているという内容でした。

特に、デービッド・アトキンソン氏の「中小企業淘汰論」に対しては納得していませんでした。

以下、静岡朝日テレビの報道内容を引用いたします。

キーマンの持論は「中小企業淘汰論」
アトキンソン氏

中小企業再編のキーマンとされるのが、菅総理のブレーンといわれている元ゴールドマン・サックスの証券アナリスト・デービッド・アトキンソン氏です。

外国人旅行客を拡大するよう菅総理に直接アドバイスした火付け役で、過去にはこう持ち上げられたことも…。

菅義偉総理大臣(去年4月):
「私はアトキンソンさんの言う通りに今やっているんです。そうしたら言うとおりになってきているのです」

そのアトキンソン氏のもう1つの持論が「中小企業淘汰論」。

「中小企業が日本経済停滞の原因」として、「生産性の低い企業を半分程度に減らすべき」と指摘。「毎年5%程度の賃上げが望ましく、対応できない企業は淘汰されればいい」という考え方です。

その結果、競争力のある企業に集約されて、設備投資などが進むことで、経営の効率化も期待できるとしています(静岡朝日テレビ 2020年10月20日)。

番組の中で、この企業の社長はアトキンソン氏が言っていることは「正論だが納得できない」と言っていました。

私もアトキンソン氏の「中小企業淘汰論」については興味深く注視しています。

私の今のところの結論は、「すべてを完全否定する訳ではありませんが正論とはとても思えない」というものです。

我が国の生産性が低い原因を中小企業に向けていることは明らかに正しくありません。

「生産性の低い企業は半分程度に減るだろう」と主張するならばわかります。

環境の変化に対応できず、市場から退出しまうことは十分にあり得るからです(それは自然に淘汰されるでしょう。これまでもこれからも。)。

しかし、アトキンソン氏の「減らすべき」はかなり強引で不自然な理論に見えます。

私は中小企業を支援する人間として、心の底から叫びたいと思います。

「中小企業をみくびらないでいただきたい!」と。

生産性の低い原因が中小企業にあるのではない

我が国の生産性が低い原因が中小企業にあるのでは決してありません。

日本経済の停滞の原因も然りです。

実際に、付加価値は大手企業に負けていません。

また、中小企業はイノベーションの担い手です。

当然、雇用も担い手です。

以下の円グラフをご覧ください。

規模の小さい企業の生産性が低く、大きい企業が高いと決めつけるのはいささか強引過ぎるのではないでしょうか。

生産性が低い要因は「いいものを安く」にある

我が国は随分長い期間デフレ経済です。

我が国はいつの間にか「いいものを安く」という価値観に支配されてしまいました。

これが我が国の停滞の真因です。

働く人たちの給料まで「いいものを安く」に巻き込まれてしまいました(これによって少子化と年金問題も深刻になりました)。

ですから、「いいものを安く」を国全体でやめることが生産性を高める確実な方法です。

私は「いいものを安く」の問題点を最も尊敬する偉大な経営者に教えていただきました。

「安かろう、悪かろう」や「いいものはそれなりの価格」が自然なのです。

なお、生産性とは、アウトプット(産出)÷インプット(投入)で示されます。

我が国はインプットを効率よくすることには優れていますが、アウトプットを大きくすることは得意ではありません。

付加価値を価格に上乗せすることがどうも苦手です(反対になぜか安くしてしまうのです)。

車でも時計でも、我が国に欧米のような高級ブランドがないことも一理あるのではないかと考えています。

技術力はあるのに勿体ない話しですね。

ちなみに、製造業に関して言うならば、話が国の人財と技術力は世界でトップクラスだと思っています。

しかし、なぜかその技術の結晶を安く売ってしまうことを繰り返してきました。

少なくとも平成の約30年は「いいものを安く」の価値観が働く人の給料まで巻き込んで加速していった時代だと思います。

我が国が欧米と比較して低い人件費で世界最高の技術を誇っているのはどうみても不自然です。

本当に勿体ない話しです。

なお、価格競争は中小企業が牽引しているのではありません。

それは大手企業です。

以下は2017年のデータですが、原材料費が22%アップしているのに、最終財が0.5%しか高まっていないという記事です。

21.5%も圧縮されている訳ですから、明らかに不自然です。

ひとつの最終財をつくりだすためには様々な協力会社が必要です。

このことから、協力会社(多くが中小企業)に相当のしわ寄せが及んでいることは想像に難しくありません。

利益は出ませんから、賃金も上げられません。

これは「いいものを安く」が行き過ぎた結果です。

我が国の生産性が低い原因は、むしろ価格競争を積極的に展開している大手企業にあると思います。

一体どこを見て中小企業に生産性がない、価値がないと言いきっているのでしょうか?

アトキンソン氏は東洋経済オンライン(2020年3月27日)において次のようなことを述べています。

日本では、全企業の99.7%が中小企業です。これらの中小企業をひとくくりにして「日本の宝だ」というのは、究極の暴論です。冷静な目で見ると、中小企業は日本という国にとって、宝でもなんでもありません。宝なのは、大企業と中堅企業です。

特別な理由がないかぎり、小規模事業者や中小企業に「宝」と言えるような価値はありません。将来、中堅企業や大企業に成長する通過点としてのみ、価値があると言えます。永遠に成長しない中小企業は、国の宝どころか、負担でしかないのです。

中小企業は宝ではなく、大手企業・中堅企業こそ国の宝という発言にはただただ驚いてしまいました。

一体どこを見て中小企業に価値がないと言いきっているのでしょうか?

中堅企業や大企業に成長することだけに価値があるという考え方はあまりにも偏っています。

中堅企業や大企業のリスクを考え、敢えて上場しない優れた中小企業もあるのです。

中小企業に価値がないと言いきるのならば、中小企業に仕事を発注している大手企業・中堅企業は全く意味のないことをしている訳です。

ならば自社でやればいいのです。

しかし、それは不可能です。

大手企業・中堅企業は多くの協力会社のおかげで商品・サービスを生み出すことができるからです。

協力会社の多くが中小企業であり、そこで働く方々は制服の色が違うだけの社外社員なのです。

元請企業にとって「協力会社無くしては自分たちの商品・サービスは提供できない」という原理原則を無視している点に大きな違和感を覚えます。

氏は大手証券会社のゴールドマン・サックス出身です。

証券のスペシャリストであっても、中小企業再編のスペシャリストとしての実績は未知数でしょう。

ならば、中小企業再編の実績を示していただきたいと思います。

「中小企業淘汰論」はあくまでも持論であり、実績ではない点に注意すべきです。

アトキンソン氏の持論に基づいて中小企業が実験台になるようなことは絶対にあってはならない

アトキンソン氏は政府の成長戦略会議にも名を連ねています。

今後、氏の持論に基づいて、現実の世界で我が国の中小企業が実験台にされるようなことはあってはなりません。

絶対に。

国民は大手企業で働いている方々だけではありません。

大部分は中小企業で働いているのです。

我が国の事業所の99.7%が中小企業であり、そこで働く人は労働者の約7割を占めています。

菅内閣が文字通り「国民のために働く内閣」であることを切に願うばかりです。

M&Aを急がなければならないのは後継者難のため

今後、M&Aはより一層増えていくことでしょう。

それは経営者の後継者の問題が大きいです(人手不足は相当深刻です)。

2025年には経営者の6割が70代になるという予測があります。

このまま後継者が決まらなければ、市場から退出をせざるを得ない状況に追い込まれてしまう中小企業は多いのです。

結果的に再編は進まざるを得ません。

しかし、それは決して中小企業の生産性が低いから、或いは価値がないから、という要因ではないことを明記したいと思います。

中小企業のみなさん、ぜひ一緒になって奮起していきましょう

最後に、もう一度「中小企業をみくびらないでいただきたい」と言いたいと思います。

中小企業は決して我が国の生産性が低い原因ではないのです!

私が知っている中小企業の社長はどなたも愚直に仕事をされています。

大手企業以上の高業績を叩きだしている方もおられます。

無論、怠けている人はただの1人もいません。

そして、新型コロナの影響で不況に陥っても、社員さんを大切にしています。

大手企業のように、早期・希望退職を促しているようなことはありません。

これは美談でも何でもなく事実です。

ですから、中小企業に価値がないと言いきるアトキンソン氏の持論が悔しくてたまりません。

私は中小企業のみなさんに対して、ますます奮起していきましょうと伝えたいと思います。

我が国の生産性の低さは中小企業が原因であるという氏の持論を撤回してもらいましょう。

将来、中堅企業や大企業に成長する通過点の中小企業のみが価値があるという持論も然りです。

そのために、ひとつでも多くの中小企業が「人を大切にし、関わる人が幸せになるいい会社」に変わっていくべきだと思います。

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